近年、「HSC」という言葉をよく耳にするようになりました。
私たちのもとには不登校や母子登校、行き渋りなどに関するご相談が日々寄せられていますが、親御さんがお子さんについて「HSCの傾向があります」「HSCではないかと思っています」などおっしゃるケースも増えてきています。

大人の場合は「HSP(Highly Sensitive Person)」と呼ばれますが、この「HSP」「HSC」という言葉が最近メディアやSNS上などで頻繁に取り上げられるようになり、一般的に認知されるようになってきました。

みなさん、こんにちは😀りーぼ先生です。

目次

HSCって何?

HSCとは、Highly Sensitive Childの略で、「人一倍敏感な子ども」を意味します。
アメリカの心理学者エレイン・N・​アーロン氏が提唱した言葉で、大人の場合は「HSP(Highly Sensitive Person)」と呼ばれます。

HSP/HSCの特性

アーロン氏はHSP/HSCの特性として、以下の4つ(DOES)を挙げています。

【D】深く処理する(深く考える)(Depth of processing)


【O】過剰に刺激を受けやすい(being easily Overstimulated)


【E】全体的に感情の反応が強く、特に共感力が高い(being both Emotionally reactive generally and having high Empathy in particular)


【S】ささいな刺激を察知する(being aware of Subtle Stimuli)

部分的に当てはまるという方もおられると思いますが、HSP/HSCと定義されるのは、この4つの全てに当てはまる場合です。

これらをもう少しかみ砕いて具体的な例を挙げてみましょう。
HSCのお子さんは、例えば、以下のような傾向を強く示しやすいです。

・空気を読み過ぎてしまう
・「まあいいか」と割り切ることが苦手
・におい、光、音などの刺激に敏感
・痛みを感じやすい
・騒がしいところが苦手
・誰かが叱られているとしんどくなる
・困っている人を放っておけない
・他人の変化にすぐに気がつく
・嫌だと思ってもNOと言えない
・他人の些細な言動で傷つきやすい
・相手の機嫌を過剰に気にしてしまう

こういった傾向が強いことによって、人との関わりの中でストレスを溜めやすかったり、生きづらさを抱えやすくなったりします

HSP/HSCは病気や障がいではない

当センターにご相談いただく方の中でも、HSP/HSCが病気であると捉えている方は少なくありません。

確かに診断名のようにも捉えてしまうかもしれませんが、HSP/HSCは病気や障がいではなく、医療機関を受診して診断名がつくわけではありません。

また、性格とも少し違います。
HSP/HSCは脳のシステムによる生まれ持っての”気質”であり、後天的なものではないとされています。
そのため、「時間が経てば治る」というものでもないですし、「気にしないようにすれば解決する」というものでもありません。

HSCは不登校になりやすい?

学校には、たくさんの子どもたち、先生たちがいて、一人一人性格も違います。多少のトラブルであれば、学校内のどこかで日常的に起こります。

クラスがざわついていたり、大きな声や音が聞こえてきたりすることもあるでしょう。

どこかで先生が生徒を叱っていたり、生徒同士で軽い言い合いをしていたり、給食の時間に誰かが嘔吐してしまったり、ということだってあるかもしれません。
少し気の強いクラスメイトがいて、自分がその子から何か傷つくようなことを言われてしまったり、仲良くしていたはずの友達とぎこちなくなってしまったりすることもあるかもしれませんね。
学校という環境にいる以上、周りを意識せずに静かに一人で過ごすということはなかなか難しいでしょう。

学校は、良くも悪くも刺激の多い場所なのです。

HSCのお子さんは、その刺激を他の子よりも敏感に、強く受け取ります。
そのため、学校生活でどうしても疲れやストレスを感じやすい傾向にあります。

結果として「学校がしんどい」「人と関わりたくない」「家にいたい」となり、登校渋りが出たり、母子登校が始まったり、学校をお休みし始めたりするケースが少なくありません。

HSCをどう捉えるか

HSP/HSCは5人に1人の割合でいると言われます。
案外身近な存在なんだなと感じられる方もいるかもしれませんね😊

HSP/HSCそれ自体は決して悪いことではありません。

人の気持ちを敏感に察することができるということは、人の優しさや温かさもよく感じ取れるということでもあります。
些細なことにもよく気がつくからこそ、創造力が発揮できたりすることもあります。

とはいえ、学校生活に限らず社会に出た後でも、たくさんの刺激を受け取り、それによって「しんどい」「疲れた」と感じることも多いかと思います。

今後子どもたちが社会に出て生きていくことを考えると、自分自身の気質と上手く付き合う術を身につけていくことが大切でしょう。

繊細な子、敏感な子=HSCというわけではない

また、注意が必要なのは、「繊細な子、敏感な子=HSC」というわけではないという点です。

HSCは脳のシステムによる生まれ持っての気質であり、後天的なものではないと先ほど書きましたが、

その一方で、後天的にHSCに似た性格傾向が表れているというケースもあります。

繊細・敏感な”性格”なのであれば、その後いろいろな人と出会ったりいろいろ経験な経験をしたりする中で、その性格が変わっていく可能性はあります。

求められる家庭教育とは

私たちにご相談いただくケースでは、お子さんに以下のような傾向が見られることが多々あります。

・周りの目を気にしやすい

・失敗を怖がる

・外では自分の意見を言えないことが多い

・先生が叱っている場面が苦手

・友達から誘われると嫌でも断れない

・環境の変化が苦手

こういった性格傾向はHSCの特徴とも重なる部分があります。
ですが、実際のところ、先天的な気質であるHSCなのか、後天的に身についた性格傾向なのか、というところの判断は非常に難しいと言えます。

上記のような傾向のあるお子さんでも、家庭教育を実践することでその傾向が徐々に和らいできたというケースはよくあります。
この場合、後天的に身についた性格傾向であったという見方の方が適切でしょう。

親の対応が過干渉・過保護であった場合

例えば、これまでの子どもに対する親の対応が過保護・過干渉であったという場合。
その影響もあって、子どもは上記のような傾向を後天的に強く示すようになっていた、ということが往々にしてあります。

親御さん自身少しでも思い当たる節があり、また敏感さや繊細さを持ち合わせているがゆえに子ども自身がしんどさを感じてしまっているとすれば、一概に「HSCだから」と捉えるよりも、まず家庭の対応を変えてみることが先決なのではないかと思います。

繊細な性格傾向が強い子の場合、家庭の中で「小さな失敗をする経験」を積ませてあげることが大事だと考えられます。

子どもが失敗しそうなときに親が待ったをかけるのではなく、失敗をするところまでを見守ってあげましょう

また、自分の考えに自信が持てないという子は多いです。

そのため、家庭の中でも自分で考え、それを口に出したり実践したりする機会を積極的に作ってあげられると良いでしょう。

まずは親が先回りをして手出し口出しをしないということが必要です。

その上で、子ども自身がなかなか自分の考えを表に出せないようであれば、「〇〇はどう思う?」と本人に考えさせてあげることも大事だと考えられます。

その際、どのような返答が返ってきても、子どもなりに考えた答えとしてまずは受け止めてあげましょう。

たとえそれが「分からない」という返答であっても、子ども自身が導き出した一つの答えですから、否定する必要はありません。

家庭内の対応によって後天的に身についた性格傾向であれば、親御さんがこれまでと違う対応を積み重ねていくことで、変わってくる可能性もあります。

あるいは、先天的なものであったとしても、自分で考えて行動する経験を繰り返すことで、自分の気質との付き合い方を学んでいくでしょう。
繊細だから、傷つきやすいからと、何かあるたびに親が先回りや手出し口出しをし続けていると、いざというときの対処法を本人がいつまでも学べないということになりかねません

最終的には親ではなく子ども自身が解決すること、という捉え方は必要になるでしょう。

まとめ

ここまでHSCについて解説しました。

HSP/HSCという言葉が一人歩きをしてしまい、不安に感じてしまっていた親御さんもいらっしゃったのではないかと思います。

親である以上、子どものことを想い心配すること・不安になることはありますが、出来ることならしなくてよい心配や不安は抱えずに置いておきたいものですよね。

HSCという気質のあるお子さんの場合、対応に工夫が必要な点も少なからずあると思います。
ただ、HSCであってもそうでなくても、「その子にとって何が必要か?」をしっかり見てあげながら関わっていくことが大事というのは変わらないでしょう。
手を貸してあげることがその子のためになるのか、ぐっと堪えて見守ってあげることがその子のためになるのか…
いろいろな選択肢があって迷ったときは、「目先のことだけではなく、将来的にその子のためになるのはどの選択肢か?」というところを考えていくと良いかもしれませんね😄