復学支援カウンセラー
今回は実際の復学支援事例をご紹介いたします。

復学支援は一件一件お子さんの状況や家庭の状況、学校の環境などお子さんを取り巻く状況すべてをアセスメント(分析)し、復学することがお子さんにとって「社会的な自立」に繋がるか、お子さんの思いとして「学校に戻る」という意思があるのか、など、家庭の状況を復学支援カウンセラーが分析したうえで判断し、親御さんにその判断をお伝えします。そして、ご理解いただいたうえで復学を目指し始めます。

全く同じ支援というものは存在しません。

今回、ご紹介する事例はあくまでこの家庭では有効的な対応だったという前提でお読みいただければと思います。

目次

小学5年生男の子のケース

不登校になったきっかけ

3年生の春ごろ、体調不良が次々起こり、お休みし始めるようになった。

いろいろな病院へ行くも、特定の原因は見つからずにお休みが続くようになる。

最後に受診した心療内科さんの診断で

「子どものすべてを受け入れ、たくさん甘えさせ、本人が望むことをすべてやらせ、本人が動き出すまで待ちましょう」

との診断をいただく。

その診断の通り、学校は休ませながらエネルギーの回復に努める。

不登校から別室登校、母子登校、五月雨登校へ

3年生の間は子どもは特に動き出さずに家庭は見守り続ける。

4年生になり、子どもが動き出す。

別室登校、母子登校、五月雨登校を経て、一年間が過ぎる。

しかし、5年生になり、クラス替えを気に学校へ行きづらくなり、お休みが始まる。(4年生時はクラス替えがなかった)

支援開始

この時点で親御さんがペアレンツキャンプの本を手に取られ、私たちの考え方に触れていただいたそうです。

その考え方に共感いただき、お問い合わせいただいたようです。

支援開始時の家庭の状況

家庭内は比較的落ち着いていました。

心療内科さんからいただいた診断のように家庭内では大きな負荷を与えず、様子を見守るという対応をしていたこともあり、暴れたりするようなことは見られませんでした。

しかし、以下のような様子が見られました。

・赤ちゃん返り

・母子密着

・一人で寝れない

・昼夜逆転

・お風呂に入らない

・ごはんは一日一食

というような様子でした。

見守ることで落ち着いてはいましたが、親御さんとしては心配になるような行動が見られていました。

家庭の対応

私たちの支援では家庭ノートチェック法電話カウンセリング、メールカウンセリングで家庭内の様子を詳しく把握してアセスメント(分析)やアドバイスをしていきます。

見守る中でも家庭内で見えた子どもの様子を分析し、子どもへの接し方を変えていってもらいました。

支援開始前は子どもの都合にすべて親が合わせていたところがありました。

ですので、まず親御さんには「ご自身の時間を大切にする」ということから始めていただきました。

親御さんが「自分の時間」を大切にしていただくことで、子どもばかりに目が行くことが減っていきます。そうすることで「密着」状態にあった親子関係が「適度な距離感」を保つことができました。

また、親御さんが「自分の時間」を大切にし始めることで、子どもへの干渉も減っていきます。子どもへの過ぎた干渉がなくなることで、子どもは子ども自身のことを考える時間を持つことができます。干渉が多いとどうしてもその干渉されたことについて考える時間を取られるので自分自身と向き合う時間が取れません。

また、密着する必要がなくなったことで、赤ちゃん返りのような状態もなくなっていきました。

この「適度な距離感」を持てたことで、子どもからの発信も増え、会話も増えてきて、子どもから「暇だなー」とか「学校なー」などと言う発言も増えてきました。

このタイミングで親御さんと相談しダイレクトアプローチ支援を導入することを決めました。

アウトリーチ型支援法であるダイレクトアプローチ

ダイレクトアプローチとはお家に直接カウンセラーが介入し、子どもを支える支援法です。

このケースでは一度、不登校から学校に戻った経験もあることから、復学をすることよりも継続して登校するためにサポートが必要と判断しました。

その判断を親御さんにも伝え、ご理解いただき、お子さんに直接会いました。

訪問カウンセリングにて直接子どもに会ったことでできる分析

初めて会った彼は実にしっかり受け答えのできるお子さんでした。

家庭内の彼は母子密着や赤ちゃん返りのような状態を見てきていたので、いくら改善されたとは言え、ここまでしっかり受け答えできるとは驚きでした。

この「しっかりした彼」と家庭で見せる「甘え過ぎる彼」との間に大きなギャップがあることも学校社会に出続けるためにはストレスになっていると考えられます。

家庭内では子どもが親に多少甘えることはもちろんあります。ただ、それが過ぎてしまうと「甘えられる親がいない学校はしんどい」と変換されてしまうことがあります。

「適度に甘えられる存在」に親御さんはなってあげることが今後は求められるだろうと考えられました。

訪問カウンセリングでお子さんに会ったからこそ見えた分析結果でした。

「本当は学校に戻りたい」

お子さんと直接会い、話していくとお子さんから「本当は学校に戻りたい」と話してくれました。

彼が話してくれた内容は

・クラスにうまくなじめなった

・でも、クラスメイトが嫌いとかじゃない。なんとなくそう感じた

・お腹が痛くなったりしないか心配だった

・学校は行ったら友達はいるし、行けるなら行きたい

ということを話してくれました。

その話を受けて私たちからできるサポート内容を伝え、復学準備をしていくことを決めました。

復学準備

復学に向けた準備とは「学校に明日行ったとしたら何が不安か」を元に準備を進めます。

いきなり学校に行っても

・授業がどこやっているかわからない

・座席がわからない

・クラスメイトの顔と名前が一致しない

・担任の先生と会うのが気まずい

・移動教室の場所がわからない

・朝の会でなにをやっているかわからない

など、学校のことがわからないことだらけになっています。

このわからないことだらけの状態を解消するために学校の先生方の協力をいただき準備を進めていきます。

また、準備だけしていてもモチベーションが保てなかったり子どもが飽きてしまったりすることがあります。

そうならないよう、訪問カウンセリング中は子どもの好きな遊びで一緒に盛り上がったりしながらサポートしていきます。一緒に遊んで楽しいと子どもが思ってくれるとカウンセラーとの信頼関係(リレーション)が構築されていきやすくなります。

復学

復学当日は彼の復学を歓迎するように青空が広がっていました。

訪問カウンセラーは早朝からお家に伺います。

起きるところからサポートしていきます。

彼はすでに起きていて、朝ごはんを食べていました。

どこかスッキリしたような顔をしていたと思います。

そのままお家を出る準備を進め、途中「お腹痛い」とトイレに行くこともありましたが、登校時間に間に合うように出発することができました。

出発するとき少し緊張した表情はしていましたが、「いってきます」と親御さんにはっきり伝え玄関を出て行きました。

継続登校

この日から継続登校が始まりました。

継続登校中もカウンセラーがサポートに入ります。

いくら準備したとしても学校に行ったからこそ起こる問題があります。

その問題を解決するためにカウンセラーはサポートし続けます。

とはいえ、毎日伺うこともできないので、家庭の対応も大切になります。

彼は時々、お休みしたり、家庭内でうまく行かないと親にあたってしまうことがあったり、学校に行ったことで受けるストレスもあったようですが、カウンセラーのサポートと親御さんの家庭内での対応により、徐々に落ち着きを取り戻し、体調不良以外では休まずに登校できるようになりました。

特に家庭では彼がストレスをためた時に、親御さんがうまく話を聴いてあげたことが効果的だったと思います。しっかり聴いてもらえるという安心感が彼を学校に行かせてくれていたと思います。

現在は支援をご卒業され、卒業された後もお子さんは頑張っているそうです。

親御さんからの感想

最後に親御さんからいただいた感想を一部抜粋して紹介いたします。

復学後も問題が起きたこともあり、不安もありましたが、その起こった問題を先生のアドバイスをいただきながら乗り越えたおかげで、問題が起こっても対処の仕方がわかるようになりました。子どもは自分自身でトラブルを解決する力が身についてきたと思います。今ではチャレンジしたいことが次々と溢れてきていて頼もしい限りです。

とおっしゃっていただいています。

他にもご感想をいただいています。こちらもご覧ください。↓

親御さんからの手紙

まとめ

今回は小学生の復学事例をご紹介いたしました。

復学はすべてではないかもしれません。

ただ、適切なサポートと家庭の支え、学校の理解があれば復学を果たし継続して登校することもできます。

「見守る」ことは必要です。ただ、見守れば勝手に子どもが動くということはないように思います。

なにかしら「働きかける」ことは必要でしょう。

このような「働きかけ」方があることも知ってもらえればと思います。

どんきー先生😆