どんきー先生
今回は中学生の支援事例のご紹介です。

中学入学後すぐに不登校となってしまうケースは多く見受けられます。

夏休みが明ければ動くだろうと思って見守っていても状況が変わらないというケースも多く見受けれます。

その中でも行きたいけど行けない、もしくは行かなくちゃとは思うけど行けない、または本人の意志は明確になっていなくとも不登校を選んだ要因をしっかりアセスメントすることで復学も可能というケースでは私たちの支援がうまく機能することもあります。
今日はその数ある復学支援の中から中学入学後すぐに不登校状態になったケースの復学支援事例をご紹介いたします。

目次

中学1年生女の子のケース

不登校になったキッカケ

小学校入学当初から行き渋りが見られていましたが、小学6年生の1学期までは多少のお休みはあるものの登校していました。

しかし、小学6年生の夏休み明けから親御さんに学校まで車で送ってもらい、別室登校や放課後登校するようになりました。
親としては子どもの将来のことを考えると小学校の間に教室復帰を目指したかったが、本人から「小学校は教室に行かない。中学校からがんばる」という意向を尊重し、別室登校、放課後登校を2学期、3学期と続けたそうです。

6年生の2・3学期の別室登校や放課後登校でも担任の先生に会って直接宿題を受け取ることや、別室に来て下さる先生と一緒に勉強や遊びを通じてコミュニケーションを取ることは出来ていたそうです。

中学校の入学式、親御さんはドキドキと不安でいっぱいでしたが、何とか学校まで親御さんに車で送ってもらい登校することは出来ました。
親御さんも「嬉しかった」とおっしゃっていたように、子どもが久しぶりに朝から登校し、他の子と同じように席に座って入学式を迎えられたことを喜んでいたようです。
その後、一ヶ月は登校をなんとか続けていました。
ただ、GWが明けた日から学校に行かなくなったそうです。
GW中は好きなことをして楽しく過ごしていたように親には見えていたとおっしゃっていました。
明確なきっかけは思い当たらないとのことでした💦

小学校の不登校の頃と違ったのは、学校に行かなくなった日から外に出ることも子どもが避けるようになったことでした。
小学6年生の頃は別室や放課後などに登校して先生とも会うことも出来ていましたが、それも全くできなくなってしまったのです。

親御さんから何度も子どもに話をしましたが、子どもは学校をお休みする理由も話さずでどう対応すべきか悩み、学校のスクールカウンセラーに相談されたそうです。
その時に言われたのは、
「娘さんは心のエネルギー切れを起こしている状態です。心のエネルギーが溜まるまで待ってあげましょう。」
という言葉でした。

その言葉を信じて親御さんはこれまで子どもに対して学校の話をしていたのを一切やめ、子どもの様子を見守るに徹したそうです。
しかし、数ヶ月見守っていても子どもは学校に向かう様子もなく、むしろ部屋から出ないことや、元気がない様子が続きました。

親御さんとしても
「いつまで見守っていればいいの?」
「子どもの将来のことを考えると本当にこのままでいいのかしら?」
などと思うようになり、藁をもつかむ思いでペアレンツキャンプにご相談されました。

アセスメントで見えてきた不登校に至った要因

支援を通じてこのご家庭をアセスメント(分析)していくと、以下のような部分が見えてきました。

💠プライドが高すぎる(こうでありたいという理想と現実とにギャップがある状態)

💠環境の変化に順応し難い(新しい環境や人に慣れるまでに時間がかかってしまう)

💠親に対する依頼心が強い(なんでも親御さんに助けを求めていた)

💠年齢よりも幼い発言が見られる(短気で感情のコントロールが苦手な部分が多い)

💠学校に行くことに対して不安が強い(お休みが長くなってしまい、どうしていいのか分からない状態になっていた)

彼はASD傾向にあるという検査の結果もありました。
ただ、私のアセスメントから可能性として後天的にASD傾向の行動特性を身につけた可能性もあるとみて、家庭の関わり方を変えることと学校社会に入り、社会でしかできない経験と失敗から起き上がる経験を積むことで成功体験を積み、成功体験を積み重ねることで自信を取り戻す。そのためのサポートをしっかりしてあげれば、この傾向を薄めることができると判断しました。

この辺りを親御さんとも共有し支援していきました。

家庭内での対応

まずは、子どもの傾向に合わせ、家庭内の対応を変えていきました。

支援前の家庭の対応

🔹過干渉、過保護傾向

🔹子ども上位傾向

🔹親が子のことで心配症であるがゆえに失敗させまいとしてきている

🔹受容、共感の姿勢が少ない

というところが見られました。

支援開始後の家庭内対応

支援を開始してからは家庭での子どもへの接し方を変えていっていただきました。

🔸過干渉な部分を見極め、必要最低限の干渉にしていく。見極めは家庭ノートにて記入していただいた親子の会話を私が分析し、アドバイスをして、家庭で実践してもらうことで見極めていきました。

🔸子どもの要求にすべて応えるのではなく、できることだけ応えていく。

🔸子どもが失敗しそうだなと思ってもあえて失敗させる。命に関わるようなことでない限りは極力失敗をさせる。ただ、失敗から起き上がれないときはサポートする。

🔸子どもの話を聴く姿勢を持つ。一旦は受容し共感できるものはしっかり共感してあげる

というような対応を家庭内では心がけていただきました。

対応を変えたことで見られた子どもの変化

そうすることで子どもからの発言も増え、部屋から出てくることも増えました。
元気とまでは言えないにしろ、自分のやりたいことを自分の判断でやってみたり、やってみて失敗しても悔しがりながらチャレンジする、過度に親への依存はなくなってきました。
良い意味で親子の距離感がつかめるようになり、穏やかに家庭内で過ごせているようでした。

とはいえ、本人から学校に行く行かないというような発言もなく、今後彼がどうしていきたいのかは家庭内だけでは見えない部分がありました。

この時点で親御さんとも相談し、ダイレクトアプローチによるアウトリーチ型支援を検討していきました。

ダイレクトアプローチによるアウトリーチ型支援の導入

ダイレクトアプローチ法とは

ダイレクトアプローチ法は不登校当事者である子ども自身が今後のついてどう考えているかを私たちが直接お家に伺い、直接子どもに会って対話をする、そうすることで子どもの内なる声を聞き出す手法です。
子どもが何かしら動き出そうと思っていても親には言い出せなかったり、学校に行こうという気持ちは持ってても今さらどうすればいいかわからず悶々としていたりするケースの場合、ただ安易に見守るだけでは何かしら動き出すキッカケを失くすということも考えられます。
このような場合にダイレクトアプローチ法を取り入れることで子どもの本音を聞き出すことが可能な場合もあります。
それが学校に戻るということじゃないかもしれません。ただ、それはそれで子どもがどうしたいかを引き出せればそれが成果です。学校以外の道もあります。それがわかっただけでもプラスと捉えられるし、学校以外の選択肢をとるためのサポートをしてあげることも可能になります。
ただ、私たちが支援してきた多くの子ども達が「学校に戻れるものなら戻りたい」という思いを伝えてくれる子がほとんどです。

とはいえ、やみくもにダイレクトアプローチ法を取り入れるとマイナスな変化が出るリスクがあります。ダイレクトアプローチ法が有効かどうかについてしっかりアセスメントする必要があり、親御さんのご理解をいただく必要もあります。

ダイレクトアプローチ導入

ダイレクトアプローチ当日。
親御さんとともにお家に入らせていただきました。

彼女は緊張した様子ではありましたが、こちらの問いかけに答えてくれました。
まずは、名前を聞き、学校名を聞き、と答えやすいだろう質問から彼女に問いかけていきました。
彼女からは小さい声ながらも聴かれたことには答えてくれました。
そういった、会話を重ね、現在の状況に至る経緯を聞きました。

彼女からは
「なんとなく学校に行きづらくなって、一日休めばまた行けると思っていたけど、逆にしんどくなって次の日も休んじゃった。そうなるとどんどん行きづらくて・・・」
と涙ぐみながら話をしてくれました。

彼女の言ってる通り実際のところ明確な理由というものはなく、一日ぐらいという気持ちで休んだことでそれが長期化してしまうケースはよく見受けられます。だからこそ不登校は「誰にでも起こりうるもの」と言われる所以なのかもしれません。

私からはよく話してくれた彼女を労いつつ、今後どうしていきたいと考えているかを聞いていきました。
彼女からは
「学校行くのは怖い。でも、学校に行けるものなら行って、高校や大学にもみんなと同じように通いたい」
と話してくれました。
この時点では彼女も感情を吐き出し、嗚咽しながらも答えてくれました。

私からは
「今からでも遅くない。怖いのは当然。お休みして離れた期間がこれだけあれば大人でも怖い。でも、この怖さを少しでも減らすことができれば、なんとかなるかもと思わない?」
と問いかけました。
そこで、復学に向けたサポートの内容を私ではなく、訪問カウンセラーから話していただきました。
私からも話せますが、私はどちらかというと気持ちの面をサポートするコーチとして対応し、具体的なサポートはより子どもと歳の近い、訪問カウンセラーが対応します。
訪問カウンセラーは子どもと二人三脚で復学に向けて走っていく、子どもと伴奏しながら支援をする、お兄ちゃんのような存在としてサポートしてもらいます。

具体的なサポートの内容を聞いて子どもの顔つきが変わりました。
何か希望を見出したようなそんな顔をしていたのを覚えています。
おそらく「何とかなりそう」と思ってくれたのではないかと思います・

また、彼女は親御さんに対して申し訳ないという気持ちを持っていたようでした。
もちろん不登校は悪ではありません。
ただ、心配をかけているということは感じていたり、自分のせいで家族みんな元気がないと思っていたようでした。
このわだかまりのようなものを持ち続けて復学の準備をしたとしても、家庭内でモヤモヤし続けることにもなりかねないと判断し、この場で親子で話し合っていただきました。
私から子どもには「自分の思っていることを今この場で両親に吐き出すといいよ」とだけ伝えました。

彼が両親に涙ながらに伝えたことは「心配かけてごめんなさい。」この一言でした。
ただ、この一言にすべてが集約されていると感じました。
ご両親はこの言葉を聞いて涙を流し、「うんうん。一緒にがんばろう」と一言伝えていただきました。
この時、子どもも親も涙を流し、お互いの気持ちを受け止めあったことで、私たちが家を出るころには子どもはなにかスッキリした表情を見せてくれたように思います。

この日から訪問カウンセラーと二人三脚でのサポートが始まりました。

復学そして継続登校のステージ

復学準備

復学までの準備の期間は約1ヶ月ほどの準備期間を取りました。

学校の先生方へは私と訪問カウンセラー、親御さんとで直接学校に伺い、サポートをお願いしました。学校側も「彼女が学校に来てくれるなら喜んでサポートします!」とこちらがお願いしたサポートを快諾してくださいました。

学校の先生方のご協力と訪問カウンセラーのサポートとで彼女は一つ一つ学校に戻るうえでの不安を解消していきました。
不安を一つ一つ解消することで、不安を乗り越えた経験を積むことができました。
その経験が彼女に自信をつけさせてくれました。
自信をつけたことで「なんとなく行けるかも?」というところから「私、学校行ける気がする」と変わっていったように思います。

また、訪問カウンセリング中は登校の準備だけではなく、子どもの趣味に合わせて一緒に遊びます。
一緒に遊ぶことで信頼関係を構築していき、遊びの中で子どもの性格傾向を分析していきます。
これを私たちは遊戯療法と呼んでいます。
このカウンセラーとの遊びの中でも様子の変化が見られていました。
カウンセラーが伺い始めてすぐは遊び中でも遠慮がちでした。
これはもちろんまだ信頼関係が構築できていないからというところもあります。
ただ、自信のなさから遠慮していた部分も見て取れました。
これが訪問カウンセラーが伺い、復学の準備をこなしたうえで遊びを続けることで、信頼関係も構築され、自信をつけたことで遊びの中でも自己主張をするようになったり、大声で笑うようになってきました。

とはいえ、準備をしたからといってすべての不安がなくなったわけではありません。
休み続けた不安は学校に入ることでしかぬぐえない不安があります。
復学をする上ではこの不安を最終的には乗り越えないといけません。
そのために訪問カウンセラーは復学予定日の前日にお家へ伺い、子どもが寝るぐらいの時間まで一緒に過ごし、その不安を軽減するためサポートしていきます。サポートと言っても話し合ってということではなく、一緒に遊び、他愛もない話題で盛り上がり、楽しい気持ちのまま寝に入るというだけのサポートです。このサポートが実は一番効果的なサポートとなります。

復学日

そして、復学日。
この日は朝から私も伺い対応しました。
訪問カウンセラーは朝、彼女が起きる時間にはお家に伺い、起きるところからサポートしていきます。

カウンセラーが伺った時には彼女はすでに起きていました。
起きて制服に着替え、朝ごはんを食べようとしていたそうです。
不安よりも登校する意志の方が強かったのでしょう。
いつも訪問カウンセリングで会っていた彼女と同じような雰囲気で話せたということです。
しかし、そろそろ家を出るという時間が近づくと緊張からかソワソワし始め、家の中をうろうろしていたようです。
そのタイミングで私が伺い、彼女と話をしました。
私からは
「久しぶりに学校に行くのだから緊張して当然。緊張しながらで構わないから家を出てみよう。おそらく学校に入っても緊張は続くと思う。緊張しながら教室で過ごしておいで。授業を全部聞けなくていいい。上の空でも構わない。緊張から目を逸らさず、向き合い乗り越えることでまた違った景色が見えてくると思う。君はここまでよく頑張った。あともう少し勇気を振り絞っておいで」
という言葉をかけました。
彼女は緊張した面持ちでしっかり聞いてくれました。
その話を終えた後、訪問カウンセラーと最後に荷物のチェックをし、「いってきます」と親御さんに挨拶をしてお家を出て行きました。

お家を出てからの彼女の足取りはスキップでというわけにはいきませんが一歩一歩着実に学校まで歩を進めて行っていました。
周りの目があるのでカウンセラーは少し離れて付いて行ってましたが、校門の前で彼女はカウンセラーに会釈をして学校に入っていきました。

親御さんからいただいたお言葉

親御さんからは

「あのまま見守っていてはこの日はなかったと思います。この日まで親子で苦しいことも悩むこともありました。でも、カウンセラーの先生方と家を出て行った彼女を見て、報われたそんな気がしました。本当にありがとうございました」

というようなお言葉をいただきました。

継続登校のステージへ

その日から、彼の継続登校が始まりました。
毎日、いきなり登校が続くというわけではなく、時には息切れし、お休みする日もありました。
その時にはカウンセラーがお家へ伺い、その時に抱えている彼の悩みを受け止め、解決するためにどうするか話し合い、時には気持ちが落ち込んでる彼を遊びで盛り上げ、継続的にサポートし、徐々に登校が落ち着いてきました。
登校が落ち着いてからも勉強面のサポートなどでカウンセラーは定期的に伺いながら、彼を支え、家庭は彼と適度な距離感を保ちながら、必要最低限のサポートをすることに徹していきました。
そうすることで、徐々に彼自身が自分の問題を自分事と捉え、問題が起きてもその問題を解決するためにどうするか、先生に助けを求めるのか、親に求めるのか、友だちに求めるのか、はたまた自分だけの力で乗り越えるのかという判断ができるようになり、最終的には支援当初とは見違えるぐらいの社会性と自立心を身につけてくれました。

支援ご卒業

そして、支援をご卒業されました。
支援卒業後、ご家庭からご連絡をいただきましたが、彼は公立高校に通い、志望の大学に進むために受験勉強を頑張っているとのことでした。
そのご連絡をいただいたときに親御さんからこんな話がありました。
「この不登校を乗り越えた経験が誰もができることではありません。しなくていい経験だったかもしれない。でも、今の彼を見ているとあの時期があったからこそ乗り越える経験もでき、今頑張れているのも乗り越えた経験が活かされているように見えます」
とおっしゃっていただきました。

家庭の力と彼の力。そして、少しのキッカケとサポートがあったことでこのような結果に結びついたと思います。
不登校のすべてのケースが復学すべきということではありません。
ただこのような事例もあることを知っておいてもらえればと思います。

↓支援を受けた実際の親御さんの声はこちらからご覧いただけます。

親御さんからの手紙

※あくまでペアレンツキャンプにおける復学支援のケースから一例をご紹介いたしました。なにかの参考程度にみていただき、家庭だけで判断するのではなく専門家にご相談されることをお勧めいたします。

どんきー先生😀