不登校の親でいることがしんどいあなたへ|自分を責めずに心を守る3つの視点

執筆者:佐々木 信恵(ペアレンツキャンプ 主任カウンセラー)

「朝、子どもの部屋の前で足が止まってしまう」「周りの家庭と比べて胸が苦しくなる」「誰にも言えないけれど正直しんどい」
お子さんが不登校になってから、そんな気持ちを抱えて毎日を過ごしていませんか?

不登校で親がしんどいと感じるのは、決して珍しいことではありません。お子さんを大切に思い、何とかしてあげたいと考えるからこそ、不安や焦り、疲れを感じることもあるでしょう。

しかし、親御さんが自分を責め続ける必要はありません。不登校の背景にはさまざまな要因があり、親御さん一人の責任ではないからです。

この記事では、不登校で親がしんどくなる3つの理由と、しんどさを抱えた時にできる3つのことを紹介します。
ペアレンツキャンプが大切にしている「安全基地」の考え方も交えながら、親御さん自身の心を守るための視点をお伝えします。

不登校で親がしんどいと感じるのは自然なこと

不登校で親がしんどいと感じるのは自然なことであり、そう感じる自分を責める必要はありません。
不登校が始まると、子供の将来や学校との関係、家庭での接し方など、さまざまな悩みが生まれます。何をすればよいのかわからず、親御さん自身が精神的に疲れてしまうこともあるでしょう。

不登校はお子さんだけでなく、家族全体に影響する出来事です。
だからこそ、子どものことだけでなく、親御さん自身の心を守ることも大切にしてほしいと思います。

まずはなぜ不登校で親がしんどくなるのか、その理由を整理してみましょう。

なぜ不登校で親はしんどくなるのか

①先が見えない不安は、誰でもしんどくなるもの

不登校の子どもを持つ親御さんにとって、大きな悩みの一つが将来への不安です。

「いつまで不登校が続くのだろう」
「このまま学校に行けなかったら将来はどうなるのだろう」
「勉強が遅れて進学に影響しないだろうか」

このような不安を抱え、毎日悩んでいる親御さんも少なくありません。

不登校がいつまで続くのか、いつ学校に戻れるのかは、一人ひとり異なります。先の見通しが立たない状況では、何をすればよいのか判断できず、精神的な負担が大きくなることもあります。

また、子どものために何かしてあげたいと思っても、思うように状況が変わらなければ無力感を抱いてしまうこともあるでしょう。

将来を心配するのは親として自然な気持ちです。しかし、先のことを考え続けて疲れてしまった時は、今できることに目を向けてみましょう。

②周りの目や比較で疲れてしまうのは自然なこと

不登校の子どもを育てていると、周囲の目が気になってしまうことがあります。学校からの連絡や親せきからの何気ない一言、同級生の保護者との会話など、日常のさまざまな場面で気を遣うこともあるでしょう。

また、同年代の子どもが毎日学校に通っている姿を見ると、自分の家庭と比べて落ちこんでしまうこともあるかもしれません。

「どうしてうちの子だけ学校に行けないのだろう」
「ほかの家庭は普通に過ごしているのに」
「自分の育て方に問題があったのではないか」

このように考えてしまうと、ますます気持ちが追い詰められてしまいます。

しかし、子供の成長や不登校の経過は、一人ひとり異なります。周囲の家庭と比較しても、同じように進むとは限りません。

周りの目が気になって疲れてしまった時は、無理に周囲と合わせようとせず、少し距離を置くことも大切です。
SNSや保護者同士の会話が負担になっている場合は、一時的に離れてみるのも良いでしょう。

③一人で抱え込むほどしんどさは大きくなる

不登校の悩みを誰にも相談できず、一人で抱え込んでしまう親御さんもいます。家族に心配をかけたくなかったり、周囲に理解してもらえないと感じたりして、自分の気持ちを話せなくなることもあるでしょう。

そのような状態が続くと、「自分の育て方が悪かったのではないか」と自分を責めてしまうこともあります。

しかし、不登校の背景には、お子さんの気質や学校環境、友人関係、家庭の状況など、さまざまな要因が関係しています。親御さん一人の責任と考える必要はありません。

また、子どものために頑張ろうとするあまり、自分の疲れや不安を後回しにしてしまうこともあります。

一人で抱え込むほど精神的な負担は大きくなりやすいものです。まずは、今の自分の気持ちを誰かに話せる環境をつくることから始めてみましょう。

しんどさをかかえたままでもできる、3つのこと

不登校の子どもを支える中で親御さん自身が疲れてしまうこともあります。そんな時は無理に頑張ろうとせず、できることから始めてみましょう。

①「しんどい」を言葉にして誰かに話す

不登校の悩みを一人で抱え込んでいると、気持ちを整理することも難しくなります。まずは信頼できる家族や友人、同じ立場の保護者などに、今の気持ちを話してみましょう。

「今日は本当にしんどかった」
「子どもの将来が心配で仕方ない」
「どう接すればよいのかわからない」

このようにうまく言葉にできなくても構いません。自分の気持ちを誰かに聞いてもらうことが、心の負担を軽くするきっかけになる場合があります。

相談する時は必ずしも解決策を求める必要はありません。アドバイスをもらうよりも、まずは気持ちを聞いてもらうことを目的にしてもよいでしょう。

身近に相談できる人がいない場合は、スクールカウンセラーや自治体の相談窓口などを利用する方法もあります。

②「何もしない時間」を意識して作る

お子さんのために動き続けていると、親御さん自身が休む時間を失ってしまうことがあります。学校との連絡や家庭での対応、日々の家事に追われ、自分のことを後回しにしていませんか?

そのような時は、意識的に何もしない時間を作ってみましょう。

好きなお茶を飲む、短い散歩をする、趣味を楽しむなど、5分でも構いません。子どものことを考えず、自分のために過ごす時間を持つことが大切です。

休むことに罪悪感を抱く必要はありません。親御さん自身が心身を休めることも、長く子供を支えていくために必要なことです。

疲れがたまっていると感じたら、家事や子どものサポートについても、できる範囲で周囲の協力を得てみましょう。

③家族と「今の気持ち」を共有する

不登校の問題を親御さん一人で抱え込んでいませんか?
家庭内で不登校への考え方が異なると、夫婦間で意見が対立したり、子どもへの接し方に迷ったりすることもあります。

そのようなときは家族でお互いの気持ちを共有する時間を持ってみましょう。

ペアレンツキャンプではこのような時間を「家族会議」と呼び、お互いを理解し合うための場として大切にしています。
家族会議では誰が悪いのかを探すのではなく、それぞれが今どのような気持ちでいるのかを話し合います。

家族会議で話題にしたいこと(例)
・不登校について、今どのような不安を感じているか
・子どもへの接し方で困っていることは何か
・家事や子どものサポートをどう分担するか
・家族それぞれが休める時間をどう確保するか

お互いの気持ちを理解することで、一人に集中していた負担を分け合えることもあります。

ただし、無理に話し合いを進める必要はありません。家族の状況に合わせてできることから始めてみましょう。

完璧な親を目指さなくていい理由

不登校の子どもをささえていると、「親として正しい行動をしなければ」と力が入りすぎてしまうことがあります。
しかし、常に冷静で、いつも優しく接することのできる親はいません。

疲れている時にイライラしてしまったり、子どもに強い言葉をかけてしまったりする日もあるでしょう。

大切なのは毎日完璧な対応をすることではありません。お子さんへの声掛けも短く、自然な者で十分です。

「おはよう」
「ごはんができたよ」
「何かあったら話してね」

こうした何気ないやり取りを通じて、親子のつながりを保つことができます。

また、登校の話題についても、お子さんの様子を見ながら、無理のないタイミングで話すことが大切です。

うまくいかない日があっても、自分を責めすぎないでください。気持ちが落ち込む日は「今日はこれで十分」と、自分に声をかけてあげましょう。

「しんどい」をはなしたことで変わったAさんのご家庭

ここであるご家庭の例をご紹介します。

不登校支援の一環として、庭で家族バーベキューを実施しました

先日、不登校のお子さんの支援をしているご家庭で、家族のコミュニケーションを深めることを目的に、お庭でバーベキューを行いました。

この日は、お父さん・お母さん・お子さんに加えて、おじいちゃん・おばあちゃんも参加。買い出しから火起こし、野菜の下ごしらえまで、すべてを「みんなで」準備するところからのスタートです。

夕方の風が心地よい中、焼きたてのとうもろこしを頬張ったり、おばあちゃんが笑顔でピースサインをしたり。気がつけば、あっという間に5時間が経っていました。

ポイント: 実は「準備の時間」こそが一番のコミュニケーションの場。「これ切っておいて」「炭、そろそろいいんじゃない?」⸺そんな何気ないやりとりの中に、普段の生活では生まれにくい自然な会話が生まれます。
庭でパーティー

不登校の子どもに「家族で一緒に何かをする」ことが大切な理由

不登校の支援というと、「どうやって学校に行かせるか」という話になりがちです。しかし私たちが大切にしているのは、その前段階⸺お子さんにとって家庭が安心できる場所、つまり「安全基地」として機能しているかどうかです。

人は、安心できる土台があってはじめて、外の世界へ一歩を踏み出すエネルギーが湧いてきます。これは大人も子どもも同じです。

① 役割があると「家族の一員」という実感が持てる

火の番、食材係、飲み物係。それぞれに出番があることで、「自分もこの家族の役に立っている」という感覚を自然に持てます。不登校のお子さんは自己肯定感が下がりやすい状態にあるため、小さな役割体験の積み重ねが大きな意味を持ちます。

② 「横並びの会話」だから本音が出やすい

面と向かって「最近どうなの?」と聞かれると身構えてしまう子も、火を囲みながらの横並びの会話なら、ぽろっと本音が出ることがあります。親子の対話は、正面からではなく横から・斜めからが基本です。

③ 祖父母の参加が親子関係に風を通す

おじいちゃん・おばあちゃんの存在は、親子だけでは煮詰まりがちな関係に、ふっと風を通してくれます。三世代の交流は、お子さんにとって「いろんな大人がいる」「自分は多くの人に見守られている」と感じられる貴重な機会です。

祖父母も準備に参加

特別なイベントでなくていい⸺家庭でできる小さな一歩

「バーベキューなんて大がかりなことは、うちには無理」と思われるかもしれません。でも、大切なのは形ではありません。

一緒に餃子を包む・カレーを作る
一緒に近所を散歩する・買い物に行く
一緒にベランダで飲み物を飲む

親子で料理親子で散歩ベランダでくつろぐ親子

「家族で同じ時間を共有し、同じ体験をする」こと自体に意味があります。この日、笑い声の絶えない5時間を過ごされたご家族の姿を見て、改めてそのことを実感しました。

これはあくまで一つの事例ですが、自分の気持ちを誰かに話すことが、負担を軽くするきっかけになる場合があります。

ペアレンツキャンプの視点:親の安心が家庭の「安全基地」をつくる

ペアレンツキャンプでは、不登校を「家族みんなで向き合うテーマ」として捉えています。その土台にあるのが「安全基地」という考え方です。

安全基地とは子どもが安心して過ごし、困難に直面した時にも心の拠り所にできる場所のことです。

子どもが安心できる家庭をつくるためには、親御さん自身の心にも目を向けることが大切です。
親御さんが疲れ切ってしまうと、家庭でのコミュニケーションにも影響が出ることがあります。だからこそ、親御さん自身が休息をとり、心の余裕を保つことも、家庭の安心につながる大切な要素です。

もちろん、親御さんが心に余裕を持つことで、必ず不登校が解消するわけではありません。お子さんの状態や不登校の背景に合わせた関わりが必要です。

また、ペアレンツキャンプでは、学校に戻ることだけをゴールにはしていません。目指しているのは、お子さんがその子らしく、自分らしく生きていける状態です。

その道のりを親御さん一人が背負う必要はありません。家族や支援者と協力しながら、一歩ずつ進んでいくことが大切です。

まとめ:不登校で親がしんどい時こそ、自分の心を大切に

不登校で親がしんどいと感じるのは、お子さんのことを真剣に考えているからこそ生まれる気持ちでもあります。

先が見えない不安、周囲の目、誰にも相談できない孤独など、しんどさの理由はさまざまです。

しかし、そのすべてを親御さん一人で抱え込む必要はありません。まずは自分の気持ちを認め、誰かに話したり、休む時間をつくったりすることから始めてみましょう。

今日からできること
・「しんどい」という気持ちを否定しない
・誰かに相談して一人で抱え込まない
・自分のための休息時間をつくる

こうした小さな取り組みが、親御さん自身の心を守るきっかけになります。

家庭が子どもにとっての安全基地となるためにも、まずは親御さん自身を大切にしてください。

お子さんの不登校や家庭での接し方にお悩みの方は、一人で抱え込まず、ペアレンツキャンプへの相談もご検討ください。

この記事を書いた人

佐々木信恵
ペアレンツキャンプ主任カウンセラー(保有資格:上級心理カウンセラー)
カウンセリング歴:10年にわたり不登校や子育てに悩む親御さんのカウンセリングを担当。これまでに300件以上の相談に対応。
「不登校は家族みんなで向き合うテーマ」という考えのもと、家庭を子どもの「安全基地」にするための関わり方や、家族会議を通じたコミュニケーションづくりを親御さんと一緒に考える支援を行っている。

お子さんの不登校や家庭での接し方にお悩みの方は、一人で抱え込まず、ペアレンツキャンプへご相談ください。

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「親が変われば、子は変わる」という理念のもと、不登校や母子登校に悩むご家庭の支援に従事。日々、多くの親御さんと二人三脚で、お子さんの自立と復学を目指した具体的なアドバイスを行っています。私自身、家庭教育の重要性を痛感しており、単なる解決策の提示だけでなく、親御さんの心が少しでも軽くなるようなサポートを大切にしています。一人で抱え込まず、まずは一歩、一緒に踏み出してみませんか。

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