
不登校でゲームばかりの小学生へ|叱る前に知っておきたい理由と親の関わり方

不登校でゲームばかりの小学生に悩む保護者の方へ。ゲームが増える背景やゲーム依存との違い、取り上げる前に知っておきたいことを解説。叱らずにできる3つの関わり方、生活リズムの整え方、親子でルールを決めるコツ、相談の目安も紹介します。
「朝から晩までゲームばかり。このままで大丈夫なのだろうか……」
学校に行けなくなった小学生のお子さんが、一日中ゲームをしている姿を見て、不安を感じている保護者の方は少なくありません。生活リズム、勉強の遅れ、昼夜逆転、ゲーム依存。心配なことが次々に浮かび、「ゲームを取り上げたほうがいいのでは」と考えることもあるでしょう。
ただし、ゲームをしている時間の長さだけを見て「怠けている」「依存している」と決めつけるのは早計です。不登校になって家で過ごす時間が増え、その結果としてゲーム時間が長くなっている場合もあります。ゲームが、学校で抱えた緊張や不安から一時的に離れられる場所になっていることもあります。
大切なのは、ゲームを無条件に認めることでも、頭ごなしに禁止することでもありません。お子さんの生活全体と気持ちを見ながら、「何のためにゲームをしているのか」「何に困っているのか」を一緒に考えることです。
この記事では、不登校の小学生がゲームばかりになる背景、ゲームを取り上げる前に知っておきたいこと、家庭でできる3つの関わり方、ゲーム依存を心配するときの見方まで、保護者の方にわかりやすく整理します。
不登校の小学生がゲームばかりになる背景
「ゲームが原因」と決めつけない方が良い理由
ゲームを取り上げる前に確認したいこと
叱らずにできる3つの具体的な関わり方
ゲーム依存を疑う時に見るべきポイントと相談先
学校に行けない日々の中で、お子さんは目に見えない緊張や不安を抱えていることがあります。小学生は、自分の気持ちを整理して「何がつらいのか」を言葉で説明することがまだ難しいこともあります。
そんなとき、ゲームは「自分のペースでできる」「目標がわかりやすい」「成功が見えやすい」「嫌なことをいったん忘れられる」という特徴を持つ活動です。学校生活の中で自信を失っているお子さんにとって、ゲームの中で達成感を得ることが気持ちを保つ助けになる場合もあります。
● 自分のペースで進められる
● 失敗してもやり直せる
● 目標や成果がわかりやすい
● 友だちやオンライン上の仲間とつながれる場合がある
● 学校のことを考えずに済む時間をつくれる
つまり、「ゲームばかり」という行動の裏に、「安心したい」「少し休みたい」「自信を取り戻したい」「誰かとつながっていたい」という気持ちが隠れている可能性があります。

ゲーム時間が長いと、「ゲームをしているから学校に行けないのでは」と考えたくなります。確かに、深夜までのゲームが続けば、睡眠や生活リズムに影響する可能性があります。
一方で、不登校になって自宅で過ごす時間が増えた結果として、ゲーム時間が増えているケースもあります。2024年の精神医学領域の解説でも、不登校とゲーム・ネットの問題は相互に関係し得る一方、学校のストレスや心理社会的要因など全体像を見る必要があると指摘されています。
そのため、「ゲームだけをなくせば学校に行ける」と単純に考えるのではなく、友人関係、学習の負担、集団生活の疲れ、先生との関係、感覚の過敏さ、本人の自己評価など、学校に行きづらくなった背景にも目を向けましょう。
ゲーム時間が長いだけで、すぐに「ゲーム依存」と判断することはできません。WHOのICD-11では、ゲーム障害は、ゲームを自分でコントロールしにくいこと、ほかの日常活動よりゲームが優先されること、問題が起きても続けることなどがあり、その結果として家庭・学業・社会生活などに重大な支障が出ている状態として整理されています。通常はそのパターンが12か月程度続くことが診断上の目安とされています。
厚生労働省も同様に、時間の長さだけではなく、ゲームのコントロールができないことや、健康・家庭・学業などの日常生活に重大な支障が生じているかどうかを重要なポイントとして示しています。
| 自分で終わる時刻を調整できるか |
| 食事・睡眠・入浴など基本的な生活が大きく崩れていないか |
| ゲーム以外の楽しみや会話が完全になくなっていないか |
| 本人も困っているのにやめられない状態が続いていないか |
| 家庭・学習・健康などに重大な支障が出ていないか |
不登校のお子さんがゲームばかりしていると、保護者としては「一度取り上げたほうがよいのでは」と思うかもしれません。しかし、ゲームが数少ない安心できる活動になっている場合、突然取り上げることで反発が強くなり、親子の会話まで減ってしまうことがあります。
小学4年生のAさん(仮名)は、学校に行けなくなってから長い時間ゲームをするようになりました。心配したお母さんがゲーム機を取り上げると、Aさんは激しく怒り、部屋にこもる時間が増えました。
そこでお母さんは、いったん「やめさせる」ことだけに集中するのをやめ、「どんなゲームなの?」「どこが面白いの?」と聞くようにしました。評価や説教をせず話を聞くうちに、Aさんからゲーム以外のことも少しずつ話してくれるようになり、その後、生活のことについても話し合える場面が増えていきました。
もちろん、すべての家庭が同じ経過をたどるわけではありません。ただ、ゲームをめぐる対立を少し減らし、子どもの世界を理解しようとすることが、次の話し合いの土台になることがあります。

最初に試しやすいのは、お子さんが何を楽しんでいるのかを知ることです。ゲームの話を聞いたあとにすぐ「じゃあ学校は?」と結びつけると、子どもは「結局、学校の話をするためだった」と感じるかもしれません。まずは、その話題だけを受け止めてみましょう。
● 「今はどんなゲームをしているの?」
● 「どこが一番面白い?」
● 「難しいところはある?」
● 「今日は何かできるようになった?」
「そうなんだ」「それは難しそうだね」と受け止めてもらえる経験は、「自分の好きなものを否定されない」という安心につながります。
夜更かしや昼夜逆転が続くと、心身の調子がさらに崩れやすくなるため、生活リズムを少しずつ整えることは大切です。ただし、「ゲームをやめれば全部解決する」と考えるより、睡眠、食事、入浴、日光、運動など生活全体を見ていきましょう。
● 夕食だけはできる範囲で家族と同じ時間にする
● 起床時刻を一気に早めず、15〜30分ずつ調整する
● 朝や昼にカーテンを開けて光を浴びる
● 寝る直前の対戦・興奮の強いゲームは避ける工夫を相談する
● できたことを責めずに確認する
東京都の不登校支援ポータルでも、寝る前のゲームやチャットの使い方を切り替える工夫が紹介されています。完全禁止だけではなく、時間帯や使い方を工夫する発想も選択肢になります。

ゲームのルールは、親が一方的に時間だけを決めるより、子どもの意見を聞きながら「何を守るか」を具体化するほうが話し合いやすくなります。
例えば、「1日○時間」だけでなく、「食事中はゲームを置く」「夜○時以降は新しい対戦を始めない」「課金は必ず親に相談する」など、生活場面に沿って決める方法があります。うまくいかなかった場合は、罰を与えるだけで終わらせず、「どこが守りにくかったか」を見直して再設定します。
● 子どもがゲームを楽しみたい時間を聞く
● 親が心配していることを「私は〜が心配」と伝える
● 睡眠・食事・課金など優先順位を決める
● 最初はルールを少なくする
● 1〜2週間試してから見直す
オンラインゲームでは、プレイ時間だけでなく、課金やオンライン上のやり取りにも注意が必要です。消費者庁は、子どもの高額課金トラブルを防ぐため、保護者のクレジットカード管理、ペアレンタルコントロールの活用、親子で遊び方や課金ルールを話し合うことを案内しています。
● 保護者のクレジットカード情報を子どもの端末に残さない
● 購入時のパスワード・承認設定を確認する
● 年齢に合ったペアレンタルコントロールを設定する
● 知らない相手とのチャットや個人情報のやり取りについて確認する
● 課金する場合は、金額と方法を事前に親子で決める
ゲームとの付き合い方を考えるときは、「時間を減らす」だけでなく、「安全に遊べる環境を整える」という視点も大切です。
次のような状態が長く続き、本人や家族が困っている場合は、家庭だけで何とかしようとせず、相談機関につながることを検討してください。
● 睡眠が大きく崩れ、昼夜逆転が長く続いている
● 食事・入浴・身支度など基本的な生活が著しく難しくなっている
● ゲームをめぐる激しい衝突が頻繁に起きる
● 本人もやめたいと言うのに自分で止められず苦しんでいる
● ゲーム以外の活動や人との関わりが極端に減っている
● 強い落ち込み、不安、体調不良などが続いている
相談先としては、かかりつけの小児科、児童精神科・心療内科、学校のスクールカウンセラー、教育相談機関、地域の精神保健福祉センターなどがあります。厚生労働省はゲーム依存症を含む依存症について、精神保健福祉センターで本人・家族からの相談を受け付けていると案内しています。文部科学省も、不登校に関する地域の相談窓口を都道府県別に案内しています。

を守ることも、不登校支援の一部です
お子さんがゲームをしている姿を毎日見ていると、「このまま勉強が遅れたら」「将来どうなるのだろう」と保護者の不安が大きくなるのは自然なことです。心配が強いほど、何か言わずにはいられなくなることもあるでしょう。
しかし、保護者の方が疲れ切ってしまうと、落ち着いてお子さんの話を聞くことも難しくなります。家族、学校、相談機関などに役割を分け、一人で抱え込まないことが大切です。
「今日はゲームのことで注意しない時間をつくる」「自分の好きなことを30分する」「相談できる人に話す」など、親自身が心を休ませる時間も確保してください。
不登校の小学生がゲームばかりしていると、保護者の方は不安になります。しかし、ゲームが増えた背景には、学校での不安や疲れ、自信の低下、家で過ごす時間の増加など、複数の事情が重なっている場合があります。
まず確認したいのは、「何時間ゲームをしているか」だけではなく、睡眠や食事、家族との会話、本人の困り感など生活全体です。ゲームを一方的に取り上げる前に、子どものゲームの世界を知り、生活リズムを一緒に整え、現実的なルールを話し合ってみましょう。
1. 子どものゲームの話を、評価せずに聞いてみる
2. 生活リズムは、責めずに一緒に整える
3. 家族会議で、守れるゲームルールを一緒に決める
ペアレンツキャンプが目指しているのは、学校に戻ることだけをゴールにすることではなく、お子さんが自分らしく生活し、少しずつ自分の力で次の行動を選べるようになることです。ゲームとの付き合い方も、そのための生活づくりの一つとして考えていきましょう。
お子さんの不登校やゲームとの関わり方に悩んでいる方は、一人で抱え込まず、まずはお気軽にご相談ください。
| Q1. 不登校中のゲームは1日何時間までなら大丈夫ですか? |
| 一律に「○時間なら安全」と決めることはできません。時間だけでなく、睡眠・食事・健康・家族関係など生活への影響と、本人が利用を調整できるかを見ます。家庭では、寝る時間や食事中の使い方など具体的なルールから話し合うとよいでしょう。 |
| Q2. 学校に行かないならゲームを禁止したほうがよいですか? |
| 登校とゲームを単純な交換条件にすると、親子の対立が強くなる場合があります。ゲームが安心できる活動になっていることもあるため、まずは不登校の背景と生活全体を確認し、必要なルールを親子で考えることが大切です。 |
| Q3. ゲームを長時間しているだけでゲーム依存ですか? |
| 長時間プレイだけでは診断できません。WHOや厚生労働省では、ゲームのコントロールが難しい、ゲームがほかの活動より優先される、問題が起きても続ける、その結果として生活に重大な支障が出るといった点を重視しています。 |
| Q4. 昼夜逆転している場合は、まずゲームをやめさせるべきですか? |
| ゲームだけを原因と決めつけず、起床時刻、日光、食事、昼寝、夜の刺激など生活全体を見ます。急激に変えるより、本人と相談しながら一つずつ整えるほうが取り組みやすい場合があります。 |
| Q5. ゲームをめぐって暴言や激しい衝突が続くときはどうしたらよいですか? |
| 親子だけで解決しようとせず、学校の相談窓口、小児科、児童精神科、精神保健福祉センターなどに相談してください。本人の安全や家族の安全が脅かされるほどの状況では、早めに専門機関へつながることが重要です。 |
・WHO「Addictive behaviours: Gaming disorder」
※本記事は一般的な情報提供を目的としており、医療上の診断・治療を目的とするものではありません。お子さんの心身の不調や生活上の支障が強い場合は、医療・教育・福祉の専門機関へご相談ください。
この記事を書いた人
佐々木信恵
ペアレンツキャンプ主任カウンセラー(保有資格:上級心理カウンセラー)
カウンセリング歴:10年にわたり不登校や子育てに悩む親御さんのカウンセリングを担当。これまでに300件以上の相談に対応。
「不登校は家族みんなで向き合うテーマ」という考えのもと、家庭を子どもの「安全基地」にするための関わり方や、家族会議を通じたコミュニケーションづくりを親御さんと一緒に考える支援を行っている。
お子さんの不登校や家庭での接し方にお悩みの方は、一人で抱え込まず、ペアレンツキャンプへご相談ください。