完全不登校の小学5年生女子
こんにちは。今回は最近関わらせていただいたご家庭のことを少しだけご紹介します。(個人が特定されないよう内容は一部変えています)
弟のことで精一杯で
お母さんから初めてのご相談の時、開口一番こう話していました。
「弟ばかりに手がかかって、あゆりのことを放置してしまっている気がして…。それが母親として一番つらいんです」
小学5年生のあゆりちゃんは完全不登校。小学3年生の弟ともき君はお母さんが毎朝一緒に登校してようやく学校に行けている「母子登校」の状態です。
弟に付き添い、学校に送り届けて、家に帰ってきたらあゆりちゃんがいる。毎日その繰り返しでお母さんには正直立ち止まる時間がありません。
あゆりちゃんが学校に行けなくなったわけ
あゆりちゃんが不登校になったのは、小学3年生の時の転校がきっかけです。新しいクラスに馴染めず、「前の友達に会いたい」という気持ちが消えないまま5年生になって勉強も難しくなりました。一時は保健室登校をしていたこともありましたが、「教室に戻って」と促されると泣いてしまい、お母さんが「保健室も本人にはつらいんだ」と判断し、それもなくなりました。
放課後の居場所として児童デイサービスも探したけれど「女の子が少ないところばかりで合わなくて…」となかなか手立てが見つからない状態でした。
学校には行けなくても体操教室や習字教室にはちゃんと通えているあゆりちゃん。行けないのは学校という場所であって、あゆりちゃん自身のちからがないわけじゃないと感じていました。
1位になったらお母さんが喜ぶと思って
そんなある日、体操教室の大会がありました。お母さんが見に行く予定だったのですが、当日急に弟の学校からお迎えの連絡が入り、大会を見られなかったのです。帰宅したあゆりちゃんは大泣きして爆発しました。
「1位になったらお母さんが喜ぶと思って一生懸命練習したのに。応援して欲しかった」
お母さんも必死で誤ってその夜は二人で泣いたそうです。この話を聞いた時、私も胸が痛くなりました。ずっと自分の気持ちを抑えて弟に譲ってきたあゆりちゃんが、初めて「自分をもっと見て欲しい」とSOSを出した瞬間だったのだと思います。
スタッフとしてどう関わるか
私自身もこのケースはすごく悩みました。あゆりちゃんは感情を言葉にするのが得意じゃない。お母さんも毎日大変でじっくり話を聞く余裕が持てない。「もっとあゆりちゃんの話を聞いてあげて」と言うのは簡単です。弟の母子登校で忙しいお母さんに多くを求めず、でも確実にあゆりちゃんへのサポートを増やすにはどうすればいいかを考えました。
「お姉さん」を探すことに
そこで一つの提案をしました。「女子大生の家庭教師を見つけて、まず“信頼できるお姉さん”を作ることから初めてみませんか」。あゆりちゃんが苦手なのは同年代の横のつながりです。でも体操教室の先生や家族とはちゃんと関われている。だとすれば少し年上のお姉さんのような存在と関係を育てながら、少しずつ人との距離感を学んでいくのが合っていると思いました。
教育大学の掲示板で探すと費用も抑えられることを伝えると、お母さんは「さっそくやってみます!」と久しぶりに明るい表情を見せました。
支援の仕事をしていると「正解がわからない」と感じる場面がたくさんあります。でもあゆりちゃんが自分から「見て欲しい」と言えたこと。それだけで確実に何かが動き始めていると思います。
このタイミングを絶対に見逃したくない。
そう感じながらこれからも関わり続けたいと思います。
